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コラム介護の専門家からみた
「理学療法士からみた福祉用具」、「作業療法士からみた住宅改修」を交代でそれぞれの視点から、専門的な知見を踏まえお伝えするコラムです。
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作業療法士からみた
社会・生活環境研究所
作業療法士・二級建築士
山田 隆人先生
我が国では長寿化が進み、平均寿命は男性で81.41歳、女性で87.45歳となっています(図1)。平均寿命と健康寿命との差は縮んできましたが、その差は男性で約8年、女性で約12年となっており、介護が必要になることを見据えて、住み続けられる住宅の機能を検討しておく必要があります。後期高齢者になると要介護認定や認知症の発生率が高くなりますので、その時期を迎える前に、住みやすい環境への準備を今から始めていきましょう。
認知症がある方へ住宅改修を実施するタイミングは、早期に実施する場合と、重症化してから実施する場合があります。
認知症がある方でも症状初期段階に改修を実施することで、(Ⅰ)環境の変化を受け入れやすく、使い慣れた環境となりやすい。(Ⅱ)生活上の課題を長期にわたり軽減できる。(Ⅲ)対象者が比較的長く在宅で暮らすことが出来る。等のメリットが得られる可能性が高いとされています。
認知症が重症化した段階で住宅改修を行う場合は、家族や支援者の継続的なサポート体制が構築されており、介護体制での安全性の確保や介護負担軽減の効果が得られることがあります。
認知症がある方への住宅改修を進める際に、特に検討が必要な内容3点を以下に挙げます。
①対象者や介護者のニーズ、認知精神行動、行動・心理症状(BPSP)、住宅状況、介護者・支援者のサポート体制や支援内容、対象者の生活動線を重視したアセスメントを行う。環境に慣れるためには、実際に生活する場面で、アセスメント・試し使い・フォローアップは行う必要があります。
ここで、将来を見据えての準備をする内容がないのではないかと疑問を感じる方が出てくると思います。認知症がある方への住宅改修について相談できる事業所を探す、今後の生活に関する相談先を探す等、住みやすい環境を実現するための最初の一歩となると思います。
参考文献
1)厚生労働省、第16回健康日本21(第二次)推進専門委員会、資料3-1、健康寿命の令和元年値について、
2)厚生労働省、令和2年度版 厚生労働白書 ー令和時代の社会保障と働き方を考えるー、
https://www.mhlw.go.jp/stf/wp/hakusyo/kousei/19/index.html
3)長谷川洋、認知症に対応した住宅改修の計画手法、高齢者等のための住宅バリアフリー改修の計画手法に関する研究、国土技術政策総合研究所資料、No.825、pp.54-87、2015