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コラム-介護の専門家からみた福祉用具・住宅改修コラム-介護の専門家からみた福祉用具・住宅改修

コラム介護の専門家からみた

福祉用具・住宅改修

「理学療法士からみた福祉用具」、「作業療法士からみた住宅改修」を交代でそれぞれの視点から、専門的な知見を踏まえお伝えするコラムです。

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からみた

暗い環境での移動は、過剰な筋緊張を生じるので注意が必要!
移動経路の照明にも注目して

 以前、住環境改善をした高齢者に改善後の生活状況を調査したことがあります。その際、夜間に転倒の経験を多く伺うことがありました。

Aさんは、脱水により入院し、伝い歩きが可能になり自宅退院、その後トイレと浴室に手すりの設置をしました。夜間にトイレに行く際に転倒を繰り返し、それを心配した家族が自室で排泄ができるようにとポーダブルトイレを購入しましたが、使いにくいと使用していませんでした。Aさんの居室を出て玄関を横切った先のトイレに移動し、時には玄関に転落することがあり、手すりを設置すれば良かったと話されていました。

高齢者が夜間に転倒する要因を確認すると様々な要因が挙げられていました。高齢者を対象とした調査では、転倒経験と関連があるとされた住環境は、「照明」、「家具調度品」、「階段・段差」であることが示されています。

また、脳血管障害を持つ方の筋活動を明るい環境と暗い環境で比較すると、明るい環境に比べ暗い環境では、大腿後面の筋活動が優位に高く、下腿前面の筋活動は明るい環境と比べてピークが遅延すると報告されています。

高齢者の視覚特性は、70歳くらいで半数が矯正視力1.0以下になり、水晶体黄変等により色の弁別や青い光の感じ方が低下し、加齢に伴い近い所にピントを合わせるのが難しくなります。また、光沢のある表面に反射した光によってグレア(幻惑:物の見えづらさ)を生じることが知られています。

以上から、高齢者の夜間の転倒は、住環境の照明が一つの要因になっていると思います。廊下を明るくすることで、夜間の転倒を予防できると思います。その方法としては、

①移動経路に照明を設置する(足元灯の設置等)

②移動動線の照明のスイッチを操作しやすい位置に変更する

③廊下の壁紙を明るいものに変えて、少しの光でも明るく・見やすくする

等が挙げられます(図1)。廊下の床を光の反射率を上げるような光沢の強いものにすると、グレア等で見えにくくなりますので注意が必要になります。

これらに加えて、住環境改善をする為に生活状況をお伺いする際には、夜間の行動や居住環境を確認する必要があると思います。

参考文献
1)矢嶋裕樹、木下香織、馬本智恵他:高齢者の転倒に関連する住環境リスク要因 —介護予防プログラム参加者を対象とした予備的調査から—、新見公立大学紀要、Vo.33、pp.133-138,2010
2)原大樹、今田健:夜間歩行時の転倒歴を有する脳卒中片麻痺症例における、明るさを変化させた条件下の下肢歩行時筋活動、理学療法Supplement、Vol41、No.2、2013
3)鵜飼一彦:高齢者の視覚、照明学会雑誌、Vol.80、No.7、pp.463-466、1996

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