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コラム-介護の専門家からみた福祉用具・住宅改修コラム-介護の専門家からみた福祉用具・住宅改修

コラム介護の専門家からみた

福祉用具・住宅改修

「理学療法士からみた福祉用具」、「作業療法士からみた住宅改修」を交代でそれぞれの視点から、専門的な知見を踏まえお伝えするコラムです。

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からみた

めまいを防ぐ手すりの設置方法
縦手すりと横手すりの使い分け

入浴時の注意すべき事項の一つに入浴前の食事は避けることが挙げられます。その理由は、入浴前の食事が血圧に影響を与え、浴室内での死亡事故を誘発する可能性があるからです。浴槽に入る際に血圧が上昇し、その後、浴槽内で体が温まることで血管が拡張し、徐々に血圧は下降します。そして、浴槽から立ち上がる際に、浴槽の水による静水圧がなくなったことに加え、起立性の低血圧により血圧は急激に下降します。この時に、めまいや意識消失が起こる可能性があります。

入浴前に食事を取ることで、血圧の変動が大きくなると言われています。食事を取ることで、消化管への血流を増加させ、食後低血圧を引き起こします。その状況で入浴すると、血圧の低下による意識障害を引き起こしやすくなります。浴槽から立ち上がる際に、頭の位置を低くして立ち上がり動作をすることで、防げることが示されています。

その方法を実践するには、浴槽の奥に設置されているL字型の手すりの設定が重要になります。浴槽の奥に設置されるL字型の手すりの役割は、浴槽内での姿勢保持及び立ち座りに使用されます。手すりの使用方法として、縦手すりは立ち座りの重心移動、横手すりは姿勢保持の補助として使われることが一般的です。しかし、浴槽の奥のL字型の手すりは違う使い方をする場合があります。

浴槽奥のL字手すり

縦手すりは、立ち座りの際の重心移動に使用します。この際、浴槽に座り込む際に使用する場合と浴槽から立ち上がる際に使用する場合があります。どちらの動作が行いにくいかによって、設定する位置が変わってきます。浴槽縁に座り浴槽に入る動作が行いにくい際には、浴槽縁に座り肘を伸ばした状況で親指の根元あたりに縦手すりがある様に設定します。浴槽からの立ち上がりが行いにくい場合には、浴槽に座った状態で、足を体に引き付け、足底を浴槽の底に付けた状態で、手すりを体側に引き、上体を起こしあげられる所に縦手すりを設定します。この使い方が、頭を低くした状態で立ち上がる方法です。

手すりを使った浴槽の出入り

横手すりは、浴槽内での姿勢保持に使用します。浴槽奥に設置する場合には、立ち上がる際の押し上げの補助、座り込みの際のゆっくり座る為の補助として使用します。これがトイレなどで使用する横手すりと違う使用方法になります。横手すりは押し上げ・押し下げで使用します。使用者の体格や座高の高さによりますが、できる限り浴槽縁の近くで、浴槽に座った状態で肩の高さよりも低い所に設置するのが理想的です。浴槽縁より10mm以内で把持できる程の高さになるかと思います。肩よりも高い場所になる程、浴槽での座位姿勢が手すりの反対方向に傾くことになります。麻痺のある方が浴槽につかると自由の利かない麻痺側は浮いてきますので、その防止としても低い位置に設定することが求められます。

参考文献:堀井雅恵、鏡森定信、麻野井英次、山田邦博:脳血流を主とした入浴中の血行動態から見た安全な入浴法の検討、日温気物医誌、第68巻、3号、pp.141-149、2005年

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