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コラム-介護の専門家からみた福祉用具・住宅改修コラム-介護の専門家からみた福祉用具・住宅改修

コラム介護の専門家からみた

福祉用具・住宅改修

「理学療法士からみた福祉用具」、「作業療法士からみた住宅改修」を交代でそれぞれの視点から、専門的な知見を踏まえお伝えするコラムです。

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「引いて」使う?「押して」使う?階段を昇る時の手すりの使用法

階段を昇る際に、手すりを「引いて」使う派でしょうか、それとも「押して」使う派でしょうか。手すりの位置などは、使用する人の身体の大きさに合わせて設定することは周知されていると思います。加えて、使い方に合わせて調整していく事も大切になります。

階段を昇る時に手すりを「引いて」素早く昇る「運動量戦略」を用いた方法と、「押して」ゆっくり昇る「力制御戦略」を用いた方法があります。実際には、これらの戦略を状況に応じて使い分けていたり、2つの戦略の中間で動作していることが多いと言われています。

運動量戦略では、体の前方の手すりを把持し、足部を中心とした回転する力(回転モーメント)を利用し、素早く昇ります(図1)。この場合、手すりは回転する力をアシストし、足部は下方向と後方への瞬発的で大きく押す力が必要になります。比較的、力の強い方や若年者が多く行う方法と言われています。

図1)運動量戦略による昇り

図1)運動量戦略による昇り

力制御戦略(「力戦略」とも言われている)では、支持基底面に体重心を載せてから階段をしっかりと下へ踏みこみ、ゆっくり昇ります(図2)。この場合、手すりは体を押し上げる力をアシストし、手すりの使用で足部にかかる力の2~4割が軽減できます。

図2)力制御戦略による昇り

図2)力制御戦略による昇り

階段の手すりの高さの設定は、使い方により調整を加えていきます。基本的な手すりの位置は、段鼻において立位時で上肢を下垂した時の手首の茎状突起の高さに合わせます。運動量戦略で手すりを使用する場合は、肘を軽く(約30°程度)曲げた肢位を取り前方で手すりを把持しやすい位置、力制御戦略で手すりを使用する場合は、階段を昇った時に手すりをしっかりと把持し押すことができる位置に調整します。

階段昇降する場合は、歩行する以上の下肢の関節可動域および筋力が求められます。より少ない力で階段を昇ろうとする高齢者の場合、「押して使う」力制御戦略で階段昇降の継続性を優先することが多くなります。また、階段昇降時に二重課題(階段昇降時に話をするなどの他の課題を同時に行うこと)を遂行する時に、昇降速度が低下すると言われています。階段昇降で洗濯物を運ぶ等の日常生活での作業課題を遂行する場合、ゆっくりした動作で安全に階段昇降することが求められます。その場合、階段で荷物を運ばないで作業を遂行していく方法を検討することも一つの選択になると思います。

参考文献
1)山本澄子:福祉用具とバイオメカニクス、福祉介護機器Technoプラス、No.4、Vol.5、pp.1-5、2011
2)福田孝之、松園圭吾:階段昇降時における手すり形状の効果について、日本機械学会九州支部講演論文集、No.058-2、pp.113-114、2005
3)萬井太規:階段昇降バランスの診るべき視点、理学療法学、Vol.49、No.1、pp.83-91、2022

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