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コラム-介護の専門家からみた福祉用具・住宅改修コラム-介護の専門家からみた福祉用具・住宅改修

コラム介護の専門家からみた

福祉用具・住宅改修

「理学療法士からみた福祉用具」、「作業療法士からみた住宅改修」を交代でそれぞれの視点から、専門的な知見を踏まえお伝えするコラムです。

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からみた

住宅改修の目標設定に必要な時間軸(発達障がい編)

高齢者の住宅改修において、生活機能と生活環境の把握に加えて、時間軸を見据えた対応が求められます。それは、生活機能の変化を3~5年程度先まで推測し、生活が維持できるよう見通した改修を行うことです。発達期の障がい・身体障がいがある方への住宅改修においても時間軸を見据えた対応が求められます。その時間軸の捉え方は、高齢期の時間軸とは異なります。

重症心身障害児・者を対象とした入浴時の福祉用具の使用に関する調査1)では、福祉用具の使用群は、体重が重く運動機能が低い子どもが多いとしています。更に、体重が重く運動機能が低く介護負担が高い場合でも、機器を使用していない事例の存在を示し、その要因として、父親が主な介護者としての関与している可能性を示唆しています。

肢体不自由の支援学校在籍者を対象とした入浴方法と介助負担の調査2)では、体格と身体機能により4つに分類し、入浴方法と介護負担を比較しています。体格が大きく身体機能が低い群で、抱きかかえ介助(図1)が多数でもっとも介護負担が大きく、体格が小さく身体機能が低い群でも抱きかかえ介助が多数で介助負担を大きくしていると示しています。加えて、子どもの体重が重くなると移動や浴槽出入り、洗体洗髪動作で介助者の多数が困難を感じ、約6割がヒヤリハットや事故を経験し、抱きかかえ介助において多発していることを報告しています。これらから、体格の大きさや体重の増加が介護負担に影響を与えることが把握できます。しかし、体格や体重が重くなっても抱きかかえ介助が行われている要因を確認していく必要がありそうです。

図1)抱きかかえ介助

図1)抱きかかえ介助

脳性麻痺がある児・者を対象とした居住環境整備状況と介護負担に関する調査3)では、重度の脳性麻痺者のうち寝具に布団を使用している者は38.0%、ベッド・特殊ベッドを使用している者は34.8%で、頸髄損傷者のベッド使用率83.3%、自力で移動が困難な高齢者の71.4%に比べると低いとしています。その要因として、脳性麻痺者では寝返りや肘這いが可能であれば、布団を使用した生活が適している場合があることを示していますが、布団を使用している脳性麻痺者の介護者は身体的な違和感が強いとしています。更に、重度脳性麻痺者の移動能力を活かすこと、介護者の身体的な負担を軽減することの双方を考慮し、長いライフスタイルのどの段階でベッドを用いた生活に切り替えるのか、将来を見据えた助言や情報提供の必要性を示しています。加えて、重度脳性麻痺者の住宅改修の実施時期は、高校卒業後が多く、そのきっかけは、「介護者の身体的負担の増加」、「成長に伴う物理的な限界」などが多いとしています。

抱きかかえ介助が行われている理由として、寝返りや肘這いなどの床での移動等を優先し、布団の使用や床での生活行為を優先していること、それらの介助が幼少期より継続されてきたと思われます。このことから、発達期の障がいがある方の支援において、これまでの支援の経過や生活の中で重視する内容を確認したうえで、子どもの心身の「成長」に合わせた支援、支援者の身体心理的な介護状況に合わせて介助負担の軽減や事故を予防する環境整備やサービス利用の検討が求められていきます。

支援を検討する上での時間的な区切りがあるとすれば、支援学校の高等部の卒業を迎える時期が挙げられます。18歳になると児童福祉法の対象ではなくなり、学校生活を中心とした時間の枠組みから、拠点が変わり社会生活サービス利用等を踏まえた時間となり、生活の枠組みが大きく変わります。高等部を卒業するまでの時間と卒業後での生活をイメージして環境支援を検討する必要があります。高等部の卒業までの介護負担の軽減を図りながら支援を継続していく視点、卒業後は社会的な支援にシフトしていき所属する社会での役割を遂行していく視点となることが多いようです。いずれにしても、環境調整を実施する上では、支援サービスの利用状況や介護・支援の経過が重要な意味を持ちますので、継続してケアをモニタリングしている支援者が、福祉用具業者や施工事業者と協業して継続的に支援して行くことが求められます。

引用文献
1)高橋 恵一:重症心身障害児・者における入浴介助に用いる福祉機器の使用群と不使用群の比較、リハビリテーション・エンジニアリング、Vol.32、No.1、pp.35-42、2017
2)阪東美智子、野口 祐子、西村顕、鈴木 晃:在宅における肢体不自由児の入浴方法と介助負担 障がい児とその家族に配慮した浴室環境の整備に関する研究、日本建築学会計画系論文集、Vo.78、No.683、pp1-10、2013
3)髙橋 恵里:重度脳性麻痺者における住居環境整備状況と介護負担の実態、日本重症心身障害学会誌、Vol.41巻、No.1、pp.103-112、2016

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