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コラム-介護の専門家からみた福祉用具・住宅改修コラム-介護の専門家からみた福祉用具・住宅改修

コラム介護の専門家からみた

福祉用具・住宅改修

「理学療法士からみた福祉用具」、「作業療法士からみた住宅改修」を交代でそれぞれの視点から、専門的な知見を踏まえお伝えするコラムです。

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住宅改修の目標設定に必要な軸をご存知ですか?(高齢者編)

住宅改修が要介護高齢者のADLを向上させるほか、現状を維持する効果があること、身体面や精神面で負担を軽減する効果がある1)2)ことが示されています。その反面、住宅改修制度の施行以降継続して、効果が得られなかった事例1)3)が多く挙げられています。住宅改修の効果を得るためには、ADLはもちろんのことIADLや介護サービスの利用・介護者の能力等アセスメントの重要性が挙げられています4)。また、住宅改修のニーズは、「身体機能の変化」、「利用福祉機器の変化」、「介助者の変化」、「家族の変化」、「生活をする上で発生する」等、環境の変化により段階的に発生している5)ことが示されており、これらへの対応が求められます。

これらから、高齢者の住宅改修を検討する際に、利用サービスなどを含めた生活自体のアセスメントの必要性に加えて、本人や周囲の環境の変化などの「時間軸」を配慮した改修計画が必要になることを示しています。高齢者の場合、加齢に伴い生活機能が低下し、生活を継続していく為に住宅改修などの環境の支援が必要となった経過を踏まえると、「時間軸」に沿って目標を設定しておく必要があると思います。

建築関連の職種の皆さんと住宅改修計画を立案する際に、話題にあがるのは、どのような生活、どこまでの介助を想定しているかです。その内容により、改修の内容に大きな隔たりがあるからです。歩行や伝い歩きでの生活を想定するのか、車椅子を使用しての生活を想定するのかにより、改修内容の優先性は変わります。

住宅改修の目標が、一人での生活を継続することなのか、介助を受ける場合であればどこまでの介助量での在宅生活を想定しているのかの確認が重要になります。自立生活の検討であれば手すりは重要になりますが、リフトなどを使用しての介助を検討する場合は手すりよりも他の内容が優先されます。改修場所ごとの優先順位も変化します。更に、疾患が進行性の病態を示すのか、それとも非進行性の病態を示すかも重要になり、進行性の病態を示す場合は変化への対処が急速に求められます(図1)。

図1)自立から介助による生活の時間軸の流れ

図1)自立から介助による生活の時間軸の流れ

「時間軸」を考慮して改修計画を検討していきますが、どれぐらい先を検討すれば良いのでしょうか。脳卒中の発症等の急激な病変による生活機能の低下を除いて、これまでの疾患や生活の経過に基づいての検討が基本的と思われます。国土交通省の資料6)によると、要支援・要介護1の方が、住宅改修・市の住宅改造費助成費を使用した環境調整で、年間11~12万円の介護給付が軽減される試算を示しています。介護保険の住宅改修と市の住宅改造助成費を用いての数値であること、地域性や関わっている職員などの物理的因子もありますので、すべてを汎化することは難しいと思いますが、1つの指標として捉えることが可能と思います。

その試算では、住宅改修費および住宅改造の平均利用額が約50万円で、生活機能の維持が5年可能であれば、環境調整費用を回収し、効果のある環境調整となることを示しています。このことから、住宅改修と市の住宅解除助成費の併用であれば、「時間軸」は5年先を見据えるというのが1つの目安となります。介護保険制度の介護度の更新が過去は2年、現在は3年が原則であることを踏まえると、2~3年先の介護度の更新で維持・向上することでこの条件はクリアできると思います。

これらを実現していくには、これまでの介護サービス利用状況や疾患等の経過に注目し、「時間軸」を見据えた改修計画の検討が求められます。介護サービスの経過や疾患・症状の経過を把握し、継続してケアをモニタリンクしているケアマネジャーさんが職能を発揮できる機会ではないでしょうか。

引用文献
1)西野亜希子、南一誠:要介護高齢者の在宅生活を促進するための住宅改修の実態とその効果、日本建築学会計画系論文集、Vol.72、No.622、pp.1-8、2007
2)村田順子、田中智子、安藤元夫、広原盛明:高齢者の住宅改善の実態と評価 : 在宅要介護高齢者の生活と住要求に関する研究 その1、日本建築学会計画系論文集、Vol.68、N0.573、pp1–8、2003
3)児玉道子、鈴木博志、宮崎幸恵:介護保険制度下における住宅改修(訪問相談)の実態と課題-なごや福祉用具プラザ訪問相談事業の分析-、日本建築学会技術報告集、Vol.15、No.30、pp.481-486、2009
4)粟津原昇、鈴木博志、宮崎幸恵:在宅高齢障害者の住宅改修計画立案に関連する要因、日本保健科学学会誌、Vol.7、No.4、pp.262-268、2004
5)西野亜希子、南一誠:住宅改修の効果とニーズの経年変化に関する事例研究、住宅総合研究財団論文集、Vol.35、pp.309-320、2009
6)長谷川洋:高齢者のための住宅バリアフリー改修の計画手法に関する研究、国土技術政策総合研究資料、バリアフリー改修の社会的効果と改修推進に向けて、pp.117-130、2015

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