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コラム-介護の専門家からみた福祉用具・住宅改修コラム-介護の専門家からみた福祉用具・住宅改修

コラム介護の専門家からみた

福祉用具・住宅改修

「理学療法士からみた福祉用具」、「作業療法士からみた住宅改修」を交代でそれぞれの視点から、専門的な知見を踏まえお伝えするコラムです。

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からみた

転倒を防ぐ手すりの取り付け時に
筋力低下より先に注目すべきこと

住宅改修や手すりの設置が転倒を防ぐ有効な手段1)になります。手すりの設置は、必要性が低い時に設置しても効果はあまり得られないとの報告があります。では、どれぐらいの生活機能の時に設置すればよいのでしょうか。下肢筋力が低下したときでしょうか。下肢筋力の低下が転倒の要因のひとつであることは、様々な報告から肯定される内容です。しかし、転倒予防を考える際には、他の要因を先に確認する必要があります。

それらを示す興味深い報告があります。整形外科疾患を有している女性高齢者の使用している歩行補助具と身体機能を比較2)したものです。その中で、独歩群と杖使用群、杖使用群と歩行器・歩行車使用群での身体機能を比較しています。独歩群と杖使用群では、杖使用群が「30秒椅子立ち上がりテスト」、「開眼片足立ち左右合計時間」で優位に低い値を示しました。また、杖使用群と歩行器・歩行車使用群の比較では、歩行器・歩行車使用群が、「握力の左右合計値」が優位に低い値を示したとしています。更に、「3mタンデム歩行」(図1)の時間と「階段昇降」の困難さが転倒歴に影響を及ぼしているとの報告3)があります。

図1)タンデム歩行

図1)タンデム歩行

これらを総括すると転倒に影響を及ぼす要因は、崩れた姿勢を戻すための「俊敏性」や姿勢を保つための「バランス保持能力」であることがわかります。姿勢バランスの保持能力や姿勢が崩れた際の俊敏性が低くなった場合に、手すり等の設置などが効果的になります。ここでは、姿勢バランス能力や俊敏性を確認する方法を示したいと思います。これらを確認する方法はいくつかありますので、参考文献に示します。詳しい内容はそちらを確認して下さい。

「転倒等災害リスク評価セルフチェック実施マニュアル」では、身体機能測定およびセルフチェックアンケートを行います。身体機能では、①2ステップテスト(図2)、②座位ステッピングテスト、③ファンクショナルリーチテスト(図3)、④開眼片足立ち(図4)、⑤閉眼片足立ち(図4)を実施します。セルフチェックシートでは自分自身が転倒要因を自覚しているかを確認します。セルフチェックアンケートと身体機能の数値から対応策を検討していきます。

『「住民主体の通いの場」推進を目的とした 健康チェック票及び体力測定マニュアル』では、健康チェック票と体力測定を行います。健康チェック票では、日常生活での役割や生活行為の遂行状況などを確認します。体力測定では、①左右の握力、②開眼片足立ち(図4)、③5m歩行時間の3つが基本で、追加測定で、④Timed up & Goテスト、⑤2ステップテスト(図2)、⑥椅子からの立ち上がりテスト(10cm・20cm・30cm・40cm)、⑦ファンクショナルリーチテスト(図3)を実施します。このテストでは、ロコモティブシンドローム判定ができることが利点になります。

図2)2ステップテスト

図2)2ステップテスト

図3)ファンクショナルリーチテスト

図3)ファンクショナルリーチテスト

図4)開眼・閉眼片足立ち

図4)開眼・閉眼片足立ち

私自身は、バランスや俊敏性を確認するスクリーニングとして、ズボン(下衣)の着脱方法を確認しています。教科書的には立位で靴下の着脱の可否を挙げていますが、ふくよかな方は靴下の着脱を座位で行われることがあり、機能との判別が難しい場合がありますので、下衣の着脱で確認しています。下衣の着脱は、片足立ちの姿勢で、姿勢保持のバランス能力・俊敏性が必要となります。更に、遂行しやすい行為なので、確認しやすいと思います。支えなく・もたれず実施可能であればほぼ問題ない、壁などにもたれる・動作中ふらつく・椅子に座って行う場合は、バランス保持・俊敏性にいくらかの能力低下があると感じていると判断していました。もう少し詳しく確認してみましょうか?との声かけで、上記に挙げた詳しいテストが行いやすくなります。

確認行為やテストでは、運動機能の把握ができます。しかし、運動機能が低いことが問題ではなく、自身の今の状況や機能を把握されているか、加えて、家庭内外での役割、日常生活の遂行状況と範囲等々により、転倒する可能性や場所が変わってきます。テストを実施し、支援計画を検討する際には総合的な判断が求められると思います。

引用文献
1)大高洋平:高齢者の転倒予防と現状の課題、日本転倒予防学会誌、Vol.1、No.3、pp.11-20、2015
2)釜﨑大志郎、大田尾浩、八谷瑞紀他: 整形疾患を有する女性高齢者の歩行補助具の種類を分ける身体機能の検討:-独歩群,杖群,歩行器・歩行車群による比較-、ヘルスプロモーション理学療法、Vol.11、N0.1、pp7–12、2021
3)清野諭、藪下典子、金美芝他:地域での転倒予防介入で焦点となる転倒関連要因、体力科学、Vol.54、No.4、pp.415-426、2010

参考文献
①「転倒等災害リスク評価セルフチェック実施マニュアル」、厚生労働省、高年齢労働者の身体的特性の変化による災害リスク低減推進事業に係る調査研究報告書 https://www.mhlw.go.jp/new-info/kobetu/roudou/gyousei/anzen/101006-1.html
②「「住民主体の通いの場」推進を目的とした健康チェック票及び体力測定マニュアル」、石川県健康福祉部、https://www.pref.ishikawa.lg.jp/ansin/kaigoyobou.html

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