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コラム-介護の専門家からみた福祉用具・住宅改修コラム-介護の専門家からみた福祉用具・住宅改修

コラム介護の専門家からみた

福祉用具・住宅改修

「理学療法士からみた福祉用具」、「作業療法士からみた住宅改修」を交代でそれぞれの視点から、専門的な知見を踏まえお伝えするコラムです。

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からみた

ハムストリングスが
嚥下機能・転倒に影響を及ぼす!

「ハムストリングスのストレッチを行うことで、嚥下がしやすくなります。」嚥下にハムストリングスが関与するの?と感じるかもしれません。

そのメカニズムは、ハムストリングスの動きが悪くなると座位姿勢で骨盤後傾が促され、腰椎は後彎(こうわん)と頸椎の前彎(ぜんわん)が促されます。その結果、円背に近い姿勢になり、顎が前に突きだした姿勢になります。その姿勢では、舌骨の移動距離が長くなり、誤嚥等が起こりやすくなります。ハムストリングスをストレッチすることで、骨盤の後傾を抑制し、誤嚥等の防止へとつながります。

円背の方の転倒にもハムストリングスが関与しています。そのメカニズムを見ていきましょう。円背傾向になると脊柱の可動性が低くなり、歩行速度が遅くなり、静止時および動作時のバランスが悪くなる1)と報告されています。更に、円背の度合いが強くなると、後方転倒が増加する2)こと、転倒が起こる動作として歩行時や立ち座り、段差昇降などの場面が大半を占める3)ことが示されています。

このことから、円背傾向がある高齢者の転倒を予防するには、転倒の可能性がある生活活動を把握し、対応方法を検討していくことになります。
把握する生活活動内容は、移動経路および動的バランスを崩しやすい方向転換する場所や生活活動、立ち座り動作として排泄・食事・居室での活動を確認する必要があります。把握した情報を整理し、優先順位を付け、対応方法を検討していくことになります。ここでは立ち座りを例にとって、環境調整方法を考えて行きたいと思います。

円背を引き起こす要因の一つとして、ハムストリングスが短縮し、骨盤後傾・胸腰椎の後彎・頸椎の前彎を促し、体重心が後方に移動することで、立ち座りが行いにくくなります。それらの連鎖を断つことが求められます。
ポイントは、立ち上がり動作初期においてハムストリングスを緩め、骨盤後傾を防ぎ、動作を容易にする環境を作ります。

①座面を下腿長より少し高くなるように設定します(図1)。
座面が高くなることで、骨盤の後傾することを防ぎ、立ち上がりを容易にします。便座の高さを補高する方法としては、補高便座(福祉用具)の使用、便器自体を工事で底上げする方法等があります。

②座位姿勢で足を引き込める空間を確保します(図1)。
注意点として、膝が屈曲・足関節が背屈位で足底が床についていることを確認します。膝関節を屈曲することでハムストリングスの伸張を防ぎ、骨盤の後傾を防ぎます。足を引き込むことで、支持基底面を小さくし、足関節の背屈角度が大きくすることができ、体重心の前方移動が容易になります。

図1)円背の方のトイレで立ち座りを容易にする座面のポイント

図1)円背の方のトイレで立ち座りを容易にする座面のポイント

③手すりを設置します(図2)。
座面の調整を行ってから位置等を調整します。手すりは、動作時の前方への重心移動と体幹を起こす補助の役割を担います。座面調整を行い、座位姿勢で前方へ上肢を延ばし、指先から親指の根元の間で設定します。座り込みの際には、立ち上がり時よりも拳1~2つ程度下方を把持する方が多くなります。その為、立ち上がり時と座り込み時の把持位置が座位で把持可能かを確認します。

図2)円背の方のトイレで立ち座りを容易にする手すりのポイント

図2)円背の方のトイレで立ち座りを容易にする手すりのポイント

参考文献
1)森藤 武、嶋田 智明、阪本 良太、小倉 亜弥子、上野 隆司・他:脊柱後彎変形患者における脊柱伸展可動性とバランス、歩行能力との関係、理学療法学、Vol.25、No.5、pp.735-739、2010
2)眞野行生・他:高齢者の歩行と転倒の実態、pp8–12、医歯薬出版、1999
3)長谷公隆:立位姿勢の姿勢制御.リハビリテーション医学、Vol.43、pp.542–553、2005
4)法所 遼汰, 岡山 裕美, 大工谷 新一:胸腰部屈曲位における立ち上がり動作の特徴─健常者における殿部離床時の検討─、理学療法科学、Vol.31、No.2、pp.253-256、2016

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