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コラム-介護の専門家からみた福祉用具・住宅改修コラム-介護の専門家からみた福祉用具・住宅改修

コラム介護の専門家からみた

福祉用具・住宅改修

「理学療法士からみた福祉用具」、「作業療法士からみた住宅改修」を交代でそれぞれの視点から、専門的な知見を踏まえお伝えするコラムです。

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からみた

認知症がある方への住宅改修は、見通し、識別、見える収納で!

日本における65歳以上の認知症の人の数は約600万人(2020年)と推計され、2025年には約700万人(高齢者の約5人に1人)が認知症になると予測されています。そうなると、認知症があっても暮らしやすい居住環境を実現していく必要があると思います。

認知機能と転倒の関係を見てみると、歩行中に話しかけられると止まってしまう対象者では転倒リスクが高くなるとされ、計算をしながら歩行する等の二重課題歩行と転倒に注目が集まるようになりました。二重課題歩行条件下では、注意機能や認知機能が関与し、様々な影響がでることが報告されています。つまり、高齢者の考え事をしながらの歩行、作業しながらの移動は、転倒する可能性を高めていると言えます。

これら認知症がある方の症状と、それらに対応する住宅改修方法が示されているものがあります。その中から、注意機能や認知機能と関連がある箇所を参照すると、居住環境に関する情報の認知が挙げられています。見えていない2階や居室が認識できない、同じデザインのドアが並んでいると自室が分からなくなる等々、見えないことへの対応、物の識別が苦手になることが示されています。

これらの場合、部屋のレイアウトを大きく変えずに、見通しやすいよう、家具を配置する。利用する扉などに、認識しやすい装飾や小物、色彩を用いて、識別しやすくする。手すり等は、壁の色などとコントラストをつけて、わかりやすくする。使用者の体格や使い方に合わせて、使いやすい手すりを設置する。これらの改修や工夫をすることで、生活行為が行いやすくなり、転倒等を防ぐことが可能になります。

しかし、これだけでは十分とは言えません。いろいろな住宅を見せて頂いた経験から言えることは、認知機能が低下している可能性がある高齢者は、見える所に物を置き、それらを利用していく傾向が非常に強いように思います(図1)。自身が行動しやすい箇所に見えるように様々な物を置かれるので、時には自身の通路を遮ってしまい、つまずきの要因になることもあります。ですので、見やすい扉や手すりなどの改修に加えて、通路や行動に影響を与えない「見える形での収納」が必要になることをお忘れなく。

図1)台所の見える所への物を置く様子

図1)台所の見える所への物を置く様子

参考文献
1)厚生労働省、認知症:しることからはじめよう みんなのメンタルヘルス、https://www.mhlw.go.jp/kokoro/know/disease_recog.html
2)山田実、村田伸、太田尾浩、村田潤:高齢者のおける二重課題条件下の歩行能力には注意機能は関与している -地域在住高齢者における検討―、理学療法科学、Vol.23、No.3、pp.423-439、2008
3)長谷川洋、認知症に対応した住宅改修の計画手法、高齢者等のための住宅バリアフリー改修の計画手法に関する研究、国土技術政策総合研究所資料、No.825、pp.54-87、2015

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