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コラム-介護の専門家からみた福祉用具・住宅改修コラム-介護の専門家からみた福祉用具・住宅改修

コラム介護の専門家からみた

福祉用具・住宅改修

「理学療法士からみた福祉用具」、「作業療法士からみた住宅改修」を交代でそれぞれの視点から、専門的な知見を踏まえお伝えするコラムです。

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からみた

転倒に影響を与えるフレイル高齢者の睡眠の質

睡眠の質の低下が転倒のリスクになることは知られています。高齢者の居住環境で居室に比べて廊下や脱衣室の室温が低いこと、廊下の照度が低い場合につまずきやすべりなどが起きやすいことが報告されています。

しかし、寝室の温度や日の光に当たる機会の減少が、フレイル高齢者の睡眠の質の低下に影響を与え、転倒につながっていることをご存じでしょうか。

高齢者を対象に実施した温熱環境および生活行動調査とアンケート調査において、フレイル高齢者は、活動的な高齢者よりも、全就床時間が長く、睡眠効率が低い傾向を示し、社会生活基本調査の平均睡眠時間よりも長かったとしています。つまり、フレイル高齢者は、長時間睡眠で睡眠効率が低く、睡眠の質が低下していたことが挙げられています。その中で、睡眠の質へ影響を与える因子として、寝室の温度と日の光に当たる量、いわゆる光暴露量を挙げています。

図1)高齢者の寝室

図1)高齢者の寝室

寝室(図1)の室温は、夏季は高くなることで中途覚醒が増加し、冬期は低くなることで中途覚醒の回数が増加する傾向がみられ、それらが睡眠の質の低下へ影響を与えていると推察しています。

また、日の光にあたることで、睡眠ホルモンであるメラトニンが分泌されます。日中の光暴露量が増加するとメラトニンの分泌量が増加し、睡眠の質が向上します。光暴露量は高齢期において減少する傾向があることが示されています。高齢になると目の水晶体の濁りや瞳孔の縮小などの加齢現象により網膜に到達する光量が減少し、それに伴い睡眠ホルモンであるメラトニンの分泌量を減少させます。更に、身体的フレイル状態にある高齢者において、外出機会が少なく室内で過ごす時間が長くなることで、慢性的に日中の光暴露量を減少させ、メラトニン分泌量が減少し、睡眠の質を低下させるとしています。

快適な睡眠ができる寝室の温度環境をつくること、社会的な役割を維持し、日中外出しやすい環境を実現していくことが、睡眠の質を向上させ、転倒を防ぐ一つの方法になると思います。

参考文献
1.Avidan, A.Y., Fries B.E., James, M.L., Szafara, K.L., Wright, G.T., Chervin, R.D. 2005: Insomnia and hypnotic use, recorded in the minimum data set, as predictors of falls and hip fractures in Michigan nursing homes, Journal of the American Geriatrics Society, 53(6), 955/962.
2.林 侑江, 伊香賀 俊治, 星 旦二、その他:住宅内環境と虚弱高齢者の転倒に関する実態調査、平成27年度大会(大阪)学術講演論文集、Vol.6、温熱環境評価 編、2021
3.城戸 千晶, 久保 博子, 東 実千代、その他:夏期および冬期におけるフレイル高齢者の睡眠と寝室温熱環境の実態、人間と生活環境、Vol.28、No.2 号,pp. 107-114、2021

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