ファーストリフォーム

ファーストリフォーム -スマホ版-

施工業者様向けの住宅建材
カタログ・インターネット通販

コラム-介護の専門家からみた福祉用具・住宅改修コラム-介護の専門家からみた福祉用具・住宅改修

コラム介護の専門家からみた

福祉用具・住宅改修

「理学療法士からみた福祉用具」、「作業療法士からみた住宅改修」を交代でそれぞれの視点から、専門的な知見を踏まえお伝えするコラムです。

作業療法士からみた住宅改修コラム一覧へ

からみた

転倒予防は足元の環境を見つめ直すことから

私たちは環境からの情報を体の様々な感覚器を通して得て、その環境に適した行動をとります。

一般的に高齢者は加齢に伴い視覚、聴覚、嗅覚、味覚、触覚に加えて、平衡感覚等が低下するとされています。更に、感覚機能の低下により、活動量が低下することも知られています。体性感覚情報も加齢により影響を受けます。高齢者における下肢の体性感覚情報である関節などの位置覚や関節運動の方向など深部感覚情報の正確性の低下と平衡感覚が関連すると、姿勢保持に影響を与えることが知られています。

最近では、足底感覚の低下が転倒に強い関連性を持つと報告されています。その研究では、足底触覚閾値として足底に対して水平方向へのせん断力を刺激として与え(図1)、知覚した値を転倒経験者とそうでない者との間で比較しています。転倒経験者は刺激の強度の値が優位に高かったとしています。転倒経験者は足底のせん断力が知覚しづらかったと言い換えることができます。

図1)足底感覚の測定方法

図1)足底感覚の測定方法

転倒を防ぐには、足底触覚への介入が必要になってくると思いますが、フットケアの実施により足部への主観的な評価が変化する報告がありますが、それ以外の知見は乏しい様です。

環境から転倒の予防を検討する場合、足底がすべりにくい環境を作ることになります。設備ではすべりにくい床材の選択、道具・用具では浴槽に敷く浴槽マットや階段の段鼻に貼るすべり止めテープ・すべり止め加工された設置型の手すり(図2)、衣類ではすべり止め加工の靴下や屋内履きなどの利用が候補に挙がります。

図2)すべり止め加工された設置型の手すり

図2)すべり止め加工された設置型の手すり

これらの支援方法を選択する場合には注意が必要です。滑りにくいことは、つまづきやすさも助長してしまいます。また、感覚を知覚する大きさや閾値は個人による差が非常に大きいと言われています。ある事例でよかったものが、他の事例では使いにくいとなる場合が予測されます。利用する前に実際の場面で試すなどして、使用しやすいかを確認する必要があります。また、疾患により足底の感覚機能の低下がある場合は、機能低下の進行程度を把握し、すべりにくい環境支援が使えなくなる状況・時期を想定しておく必要があります。

参考文献
1.北川公路:老年期の感覚機能の低下 -日常生活への影響-、駒澤大学心理学論文集、No.6、pp.53-59、2004
2.肥塚泉:感覚器の廊下と抗加齢医学 -平衡感覚-、日本耳鼻咽喉科学会会報、Vol.119、No.2、pp.87-93、2016
3.佐藤満、山下和彦、仲保徹、加茂野有徳:転倒リスク要因としての足底触覚閾値の有用性、理学療法学、Vol.47、No.5、pp.465-473、2020
4.姫野捻子、孫田千恵:在宅高齢者の介護予防に向けたフットケアプログラムの評価 ~後期高齢者に対する効果および妥当性の検証~、日本看護研究学会雑誌、Vol.45、No.4、pp.823-832、2020

これまでの記事