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コラム-介護の専門家からみた福祉用具・住宅改修コラム-介護の専門家からみた福祉用具・住宅改修

コラム介護の専門家からみた

福祉用具・住宅改修

「理学療法士からみた福祉用具」、「作業療法士からみた住宅改修」を交代でそれぞれの視点から、専門的な知見を踏まえお伝えするコラムです。

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排泄しやすいトイレ環境に服装の配慮も含まれる!

自立した中高年女性を対象とした調査で、6割に尿失禁の経験があり、尿失禁のタイプは混合性尿失禁を加えると8割以上が腹圧動作による尿失禁とされています。また、在宅の前期高齢者を対象とした調査では、尿失禁が社会生活の制限、他者との交流の減少、環境ヘの不安、意欲の低下に影響を与えるとしています。尿失禁への対処として、パッドを使用する、早めにトイレに行くことで予防する、尿失禁に関する情報を収集するが多く挙げられていました。更に、尿失禁が目立たない形や色の服装、漏れにくい下着を着用し、予備の下着や服を持ち歩く等、日頃から対処行動を取られているようです。

在宅の要介護高齢者を対象とした調査で、要介護高齢者の約6割が尿失禁を有し、尿失禁を有する在宅要介護高齢者の9割がおむつを利用し、尿意があってもトイレでの排泄に至っていない事例があると報告しています。トイレで排泄を行っていくには、自発的にトイレに移動したり、トイレを認識し排尿しようと行動したり、介護者もトイレに行かせたいと考えることが必要になると示されています。

街中に着替えがしやすいトイレが増えることを期待したいと思います。尿失禁があったとしても自分らしく暮らせるトイレ環境を充実させていくには、移動しやすく、排泄・着替えがしやすいトイレ環境、加えて、排泄しやすい服装が挙げられます。

トイレまでの移動動線に手すり・センサーライトなど照明を配置し、トイレに行きやすい環境を作る。認知機能の低下が予測される場合は、トイレの扉に「トイレ」とはっきりと読み取れる文字で、床から1300~1400mm程度の高さに提示し、行きやすいトイレ環境を作る。

排尿姿勢は座位で体幹前傾が保てる姿勢で、長時間の排泄をする方の支援にもなる前傾姿勢を保つための横手すりやもたれ手すりを配置し、排泄しやすい環境を作る。体幹前傾は肘をふとももに付け体を支える姿勢を目安とします。その際に、排便時に腹圧がかけられるよう足底がしっかり床につけられるようにします(図1)。

図1)足をつけて前傾姿勢を保つ

図1)足をつけて前傾姿勢を保つ

排泄しやすい服装は、着脱しやすいスカートの配慮、男性の場合は伸縮性があり着脱しやすいズボンが挙げられます。その際には、ちょっとした外出ができるおしゃれなものを選びたいですね。

参考文献
1)田中久美子、竹田恵子、陶山啓子、小岡亜希子、中村五月:尿失禁を有する在宅要介護高齢者の排尿手段に関連する要因、日本老年医学会雑誌、Vol.53、No.2、pp.133-142、2016
2)田尻后子、霍明、曽我部美恵子、岩崎朱美、四方早子、他:中高年女性において尿失禁が日常生活の QOLに与える影響、理学療法科学、Vol.35、No.3、pp.315-319、2020
3)西村和美、荒木田美香子:尿失禁が他者との交流に及ぼす影響と対処行動、日本看護研究学雑誌、Vol.38、No.4、pp.61-72、2015
4)水野祐輔、中川純、伊藤朱子、山崎敏、勝又英明:認知症高齢者グループホームにおけるトイレ表記のニーズと諸元の検討、日本建築学会計画系論文集、Vol.87、No.802、pp.2329-2340、2022
5)並河正晃:老年者尿失禁の病態と,尿失禁な含む寝たきり廃用症候群改善の一方法、日本老年医学会雑誌、Vol.36,No.6、pp.381-388、1999
6)浦尾正彦:排便と健康、順天堂醫事雑誌、Vol.60、No.1、2014

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