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コラム-介護の専門家からみた福祉用具・住宅改修コラム-介護の専門家からみた福祉用具・住宅改修

コラム介護の専門家からみた

福祉用具・住宅改修

「理学療法士からみた福祉用具」、「作業療法士からみた住宅改修」を交代でそれぞれの視点から、専門的な知見を踏まえお伝えするコラムです。

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からみた

トイレで活躍する縦手すり

最近、どこに行ってもトイレにどのような手すりが設置されているか確認してしまいます。誰にでも使いやすく設計されている多目的トイレは、とりあえずL字手すりが設置されているように感じます。使う人が特定されないトイレではL字手すりが重宝されますが、個人のお宅では課題となる動作から縦手すりか横手すりか考えることが必要でしょう。手すりを使う理由が曖昧なまま、トイレに手すりを設置するときに「とりあえずL字手すりで!」とならないように、バランスの面から縦手すりの使い方を考えてみましょう。

第二仙椎の前方(ヘソの5〜10cm下)にある重心から床に向けた仮想の直線を重心線といい、その重心線が支持基底面(体重を支える両足底とその間の部分)の中心に近いほどバランス(安定性)が良いと言われます。また、重心線が支持基底面から逸脱すると転倒してしまうため、逸脱しそうになると姿勢を立て直し転倒しないように安定した姿勢に戻す反応はバランス能力として最も重要です。バランス能力に優れている人は座位や立位の姿勢を保持するだけでなく、座位や立位から動いて不安定になったときでも安定した姿勢を取り戻すために素早く反応できるのです。

日常生活においてトイレ動作では、次々とバランスを崩しそうになる動作が見受けられます。トイレの蓋を開けるために腰を曲げて蓋へ手を伸ばすリーチ動作、便座にお尻を向けて座るための方向転換、ズボンの上げ下ろしをする更衣動作、最後に水を流すために前方のレバーに手を伸ばすリーチ動作などです。立位姿勢から動きを伴い支持基底面から逸脱しそうになる重心線を中心に戻すには、良好なバランス能力が必要になります。しかし、高齢者はそのバランス能力が低下しているため、これらの動きの中で支持基底面に重心線を収めておくことが難しく転倒します。そこで活躍するのがトイレの縦手すりです。立位保持でのふらつきやリーチ動作で支持基底面から逸脱しそうになる重心線は、縦に設置された手すりを押したり引いたりすることで容易に支持基底面の中心に戻すことができ転倒を予防できるのです。

L字手すりには動作を補助する移動のための横手すりと姿勢を安定させるための縦手すりの2つの役割があります。トイレ動作では立位姿勢を安定させるために縦手すりが活躍します。個人のお宅で「とりあえずL字手すり」にならないよう、縦手すりが必要なのか横手すりが必要なのか課題となる難しい動作は何かを明確にしましょう。リハビリテーションの観点を忘れずに、その人が安全にトイレ動作をできるように具体的な縦手すりの使い方を提案してみましょう。

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