日本の住宅は、建築基準法により地盤面よりも450㎜以上の高さに床を設定しないといけないことになっています。その為、住宅の外部から住宅内に移動するためには、玄関ポーチ、玄関上がり框といった段差を越えないといけない構造になっています。段差昇降が自身でできる場合は、大きなバリアにはなりませんが、車椅子を使用するようになると大きなバリアとなってします。
段差解消機を使う場合の留意点
今回は、段差解消機(図1)を使う場合の留意点を紹介させて頂こうと思います。段差解消機には、玄関などで使用する設置式のもの、車椅子で利用するものに分かれます。今回は車椅子で使用できるものの確認事項を紹介します。段差解消機を設置する際には、設置前、設置計画において十分な確認が必要となります。
【設置前の確認事項】
- 建築基準法では、エスカレーターやエレベーターなどを設置する場合、条件に応じで確認申請が必要となります。段差解消機もこれらの機器と同等とみなされます。その為、介護保険の段差解消や住宅改造助成を利用する場合は、確認申請後に制度利用申請する必要があり、実際の工事を行うまでに申請時間が必要になります。退院を控えている場合は、確認申請に必要な日数などを考慮に入れた工事計画が必要になります。段差解消機の設置を検討時に、施工業者や段差昇降機の販売・レンタル業者に確認申請の必要性を確認しておく必要があります。
- 図1)段差解消機
【設置計画での確認事項】
- 設置計画での確認は二つあります。一つは移動動線の確認、もう一つは設置場所の確認です。
1)回転スペース(図2)
ご存知の通り、車椅子は直線走行が得意ですが、横方向への移動は苦手で、回転スペースを確保しなければ移動範囲が限られてしまいます。段差解消機のへのアプローチが可能か、段差解消機を降りた際に回転スペースが確保できるかを確認します。
図2の上部の動線での家屋内に出入りすると屋内での車椅子の回転スペースを確保できますが、図2の下部の動線で家屋内への出入りを考えると、車椅子の回転スペースが確保できないために、家屋内への出入りができなくなっています。このことから、段差解消機の設置前に動線を確認しておくことが重要になります。
- 図2)段差解消機と車椅子の回転スペース
2)設置場所の確認(図3)
設置場所の確認は、設置する段差解消機が床に埋め込み(ピットといいます。)が必要かどうかです。
ピットが必要な機器の場合、住宅と外部の間にピットを設けます。玄関および住宅の道路に面する部分は、水道や下水の配管があり、深く掘り下げることができないこともありますので、注意が必要になります。また、地盤面を掘る場合は、掘った部分に水がたまらないような配慮も必要になります。ピットを必要としない機器では、床の上に機器を設置します。その際に段差解消機の厚さの段差が生じます。利用者が車椅子を操作し、段差解消機に昇降できるかを事前に確認する必要があります。