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コラム-介護の専門家からみた福祉用具・住宅改修コラム-介護の専門家からみた福祉用具・住宅改修

コラム介護の専門家からみた

福祉用具・住宅改修

「理学療法士からみた福祉用具」、「作業療法士からみた住宅改修」を交代でそれぞれの視点から、専門的な知見を踏まえお伝えするコラムです。

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からみた

改修計画は生活状況を見る必要がある
生活の特徴や姿勢にも配慮して

トイレと浴室に手すりを付けたおばあちゃんのお宅にお伺いさせて頂きました。介護保険の住宅改修や障害者や高齢者の住宅改修の助成費での改造の際に、他の部分のリフォームを同時に行うことはよくあります。そのお宅もトイレ・浴室に加えて、キッチンカウンター(流し台)の高さを変えたとおっしゃっていました。

トイレ、浴室は使いやすくなったと実際に動作をしながら話してくれました。しかし、見せていただいたキッチンカウンターの高さは、おばあちゃんが野菜を切る際に両肩を挙げての作業であり、お世辞にも使いやすいものとは感じられませんでした。少し残念な気持ちになりました。

日本で流通しているキッチンカウンターは、800㎜、850㎜、900㎜の高さのものが中心で、キッチンカウンターの高さはマニュアルでは、「身長÷2+50~100㎜」に設定すると言われています。

そのおばあちゃんの身長は140㎝程度とおっしゃっていましたので、マニュアルから導き出すと750~800㎜程度になります。そのお宅の流し台は800㎜に設定されていましたので、大きな問題はないはずです。しかし、おばあちゃんには過去に腰痛の既往があり、立位姿勢は若干の円背があり、身長は昔に比べて若干低く見積もった方がよさそうでした。身長より高いワークトップ(天板)を使用することは、肩を挙げた形での作業になり、さらに立位は後方に重心移動した形になり、不安定な姿勢になります。その姿勢で、ボールなどの道具を運んだり、包丁を操作することになり、肩周辺の痛みや腰痛など必要以上に体に負荷がかかります。重心位置が後ろに移動することで、バランスを崩すことや転倒が起こることも予想されます。

住宅改修では、こういったことは避けたいですよね!

その為には、おばあちゃんが台所をどのように使用しているかを把握する必要があると思います。毎日、三食お米を炊いている場合であれば、日に三度は洗米作業を行います。その際、前屈みになっているようであれば、腰痛を引き起こすことは容易に考えられます。そう考えるとシンクの深さを浅くして、前屈みにならないで洗米作業ができるように配慮する必要があると思います。

キッチンカウンターの高さを設定する際には、台所で行う作業(炒め物・煮物・下ごしらえ・洗う等)を確認し、どの作業に合わせるのか検討する必要があります。他にもありますが、以下に挙げる点は確認したい内容です。

  • ●炒め物を作る頻度が多い場合は、フライパン等を振りやすくするために、コンロや五徳(鍋等を置く部分)の高さを低めに設定する。
  • ●煮物を作る頻度が多い場合は、お鍋の中身を確認しやすくするために、ワークトップを高く設定しすぎない。
  • ●洗い物作業が中心であれば、前屈みの姿勢にならないようにシンクの深さを浅くする。

住宅改修を行う際に、おおよその数値等をマニュアルから導き出すことは可能ですが、個人の生活の特徴や姿勢は加味されにくいことが多くあります。使い勝手が良い住宅改修をするためには、対象となる方の身体的な特徴、姿勢、生活行為を行う手順や方法を確認し、それらに対応して調整・適応する必要があると思います。

台所での作業を行っている方にとっては推察が容易な行為が、その作業を行ったことのない方にはわからないことが多く存在し、その為に不必要な改修計画や目的の意図とは違う改修計画になることも多くあります。

工事をする関係者の方々は、生活状況を把握するための時間が限られており、日常生活で支援をしている方々や生活を遂行している本人が、改修場所をどのように使用しているか、そして、どのような作業に困難を感じており、どのように改善して欲しいのかをしっかり伝えることが大切になります。

引用文献 生活環境学テキスト、監修:細田多穂、南江堂、2016.4.1発行、「第11章 台所・食堂の環境整備」

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