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コラム-介護の専門家からみた福祉用具・住宅改修コラム-介護の専門家からみた福祉用具・住宅改修

コラム介護の専門家からみた

福祉用具・住宅改修

「理学療法士からみた福祉用具」、「作業療法士からみた住宅改修」を交代でそれぞれの視点から、専門的な知見を踏まえお伝えするコラムです。

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からみた

転倒しやすい条件と作業
足下の視野と転倒のリスク

加齢するにつれ転倒することが多くなり、後期高齢者になると転倒による怪我が重篤化し、死亡する確率が高くなることが示されています。

転倒のリスク要因の一つとして、眼疾患が挙げられています。後嚢下白内障を有する患者はない患者と比べ大腿骨骨折のリスクが5倍、緑内障患者の転倒リスクは非緑内障患者の4倍、浸出型加齢横斑変性患者の転倒リスクは対象群の約1.7倍で、女性の場合は3倍になることが報告されています1)。このことから、眼疾患が転倒のリスク要因であることがわかります。

視機能と転倒の関連性において、視力だけでなく「足下視力」の概念で転倒リスクが説明されています2)。つま先よりも75㎝先の距離の視力である「足下視力」の低下により転倒の頻度が多くなるとしています。高齢期に多い老眼は近い距離に焦点が合わず、遠くが良く見える状況で、足下が見えにくい状態となり、転倒のリスクが高くなります。

視野の下方に障害があると転倒のリスクが高くなります。先に挙げた疾患を有している場合で視野の下方に障害がある場合、転倒のリスクが高くなります。

視野の障害や疾患を有していなくても、足下の視野が制限される場合があります。

その一つは、肥満です(図1)。腹囲が大きく足下が見にくい場合、居室のカーペットなどの段差や家電製品のコードなどでつまずいたり、転倒したりしやすくなります。

肥満でない場合でも足下が見にくくなることがあります。それは、身体の前で荷物を持ち運搬している作業です。家事では、洗濯物を運ぶ際、食事を運ぶ際に、足下が見にくい状況になります(図2)。これらの作業を行っている場合も転倒リスクは高まります。

これらの状況に加えて、考え事をしている場合、急な来客や配送等で急いで対応しないといけない状況になると、更に転倒のリスクは高まります。

転倒のリスクを軽減するためには、安全に移動する方略をとることが重要になります。生活の中で移動する場所に、手すり等を使用して安全に移動できるようにする方法、物を運ぶ動線を短くする・運ぶものを少なくして移動するなど移動時の工夫をする方法が挙げられます。肥満の場合には、腹囲を小さくするための栄養摂取や運動の処方も必要になると思います。

皆さんも生活を振り返り、転倒しやすい条件や作業を探してみて下さい。意外と見つかるかも知れません。

引用文献
1. 結城賢弥、浅岡亮:高齢者眼疾患と転倒、The Japanese Journal of Rehabilitation Medicine、Vol.55、No.11、pp.921-926、2018
2. 鈴木武敏:転倒予防のための足下視力重視の屈折矯正、日本転倒予防学会誌、Vol.5、No.1、pp.7-11、2018

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