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コラム介護の専門家からみた
「理学療法士からみた福祉用具」、「作業療法士からみた住宅改修」を交代でそれぞれの視点から、専門的な知見を踏まえお伝えするコラムです。
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作業療法士からみた
社会・生活環境研究所
作業療法士・二級建築士
山田 隆人先生
高齢期において、筋力低下や歩行障害、バランス障害など、身体機能の低下が転倒リスクを上昇させることはこれまでに多く報告されています。
認知・精神状態が転倒リスクを増大させることをご存知でしょうか。認知機能障害で転倒リスクは1.8倍程度、うつでは2.2倍程度上昇するとされています。転倒予防を検討する際に、認知機能や精神機能の評価を行い、その状況に合わせた支援方法が重要になります。認知機能といっても、様々な内容があります。記憶、注意、遂行機能、情報処理、空間認知などがあります。それぞれの詳しい内容はここでは割愛します。
複数の課題に同時に注意を向けるといった注意分配機能の低下が転倒リスクを増大させる重要な要因とされています。分配性注意は、作業を中断せずに2つの作業を同時に処理するもので、最も複雑な注意機能といわれています。
これら注意分配機能の低下を簡単に確認する方法として、“Stops Walking When Talking” が活用されています。歩行中に話し掛けて、その対象者が立ち止まってしまった場合には、歩行時の会話に注意を向けることで安全な歩行が困難になるので、転倒リスクが高くなります。立ち止まることなく会話が可能であれば、注意の分散が可能なので、転倒リスクは高くはないとの判断になります。歩行中の会話が可能かどうかで、歩行の継続が判断できます。注意分配機能が低下している場合は、同時に作業を進めると問題が起こったり、作業が進まなくなったりします。それらの対象方法としては、注意を向けるものを減らすこと、物事を一つ一つ処理していく様にすることで失敗が少なくなります。
暗い廊下を感覚だよりで歩行し、トイレに向かっている高齢者の場合、歩行すること、暗いので廊下等の床の状況や段差に確認、転倒の可能性があり手すり・壁を探すなどに注意を向ける必要があります。
これらの状況には、人感センサーで廊下を明るく照らす、手すりなどを設置することで、注意を向けるものを減らすことが可能になり、転倒リスクを軽減していくことにつながります。
参考文献
牧迫飛雄馬:高齢者の認知・精神機能と転倒リスク、日本転倒予防学会誌、Vol.3、No.3、pp.5-10、2017