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コラム-介護の専門家からみた福祉用具・住宅改修コラム-介護の専門家からみた福祉用具・住宅改修

コラム介護の専門家からみた

福祉用具・住宅改修

「理学療法士からみた福祉用具」、「作業療法士からみた住宅改修」を交代でそれぞれの視点から、専門的な知見を踏まえお伝えするコラムです。

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からみた

使うことのなかった手すり
利用者の希望を最後まで追求する

今までに、設置したものの、使うことのなかった手すりがあります。専門家としてなぜそのような無駄な手すりを設置したのか疑問に思いませんか?そこには手すりの役割ではなく、手すりに込められた想いがありました。

数ヶ月前にALS(筋萎縮性側索硬化症)の診断を受けた男性の利用者でした。訪問で関わるようになった理由が、「最近歩いていると膝折れするので安全に歩きたい」という訴えでした。理学療法士として身体機能を評価したところ、下肢から進行が始まるタイプのALSで、早ければ1ヶ月前後で自力では歩けなくなることが予測できました。それでも本人は安全に歩くための手すりを廊下に設置したいと訴えてきました。

介護保険の基本理念に、利用者本位や自己選択自己決定という言葉があります。いくら理学療法士として手すりの設置に反対であっても利用者が望むときには最善の形で設置します。実際に設置した手すりは1、2週間しか使われませんでした。それだけならまだしも車いす生活を余儀なくされてからは、廊下の壁から突き出した手すりが廊下幅を狭くし車いす移動の邪魔になっていました。さらに完全に車いす生活になってからは家人の介護負担を考え施設入所となり訪問は終了しました。

僕の訪問リハ担当には、ALSや多系統萎縮症など難病に罹患した利用者が多くいました。その都度、理学療法士としての医療倫理と人としての関わりの狭間で悩まされました。本当は手すりを設置して無理やり歩くより、車いすを利用して安全に移動したほうがいいことはわかっています。それでも歩くことを選択した利用者の希望を最後まで追求することが必要なときもあります。実際に、歩けないことは在宅生活を送れないことであり施設での生活を送ることであるとは想像もしていませんでした。この利用者の本当の訴えは一日でも長く在宅生活を送ることだったのかもしれません。身体機能や生活機能に目を向けて、手すりの役割を考えるだけではいけません。手すりへの想いを知ることは、その人の生きる意味を知ることであり、生き方を尊重することなのです。

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