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コラム-介護の専門家からみた福祉用具・住宅改修コラム-介護の専門家からみた福祉用具・住宅改修

コラム介護の専門家からみた

福祉用具・住宅改修

「理学療法士からみた福祉用具」、「作業療法士からみた住宅改修」を交代でそれぞれの視点から、専門的な知見を踏まえお伝えするコラムです。

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からみた

歩くことにこだわった手すり
今ある力を利用した最適な移動手段

僕はノーマライゼーションという言葉が大好きです。“障がいのある人もない人も互いに支え合い、地域で生き生きと明るく豊かに暮らしていける社会を目指す”といった考え方です。日本には十分に浸透していないのが現状で、その原因はリハ職や福祉職にあるかもしれません。

退院後しばらくしてから依頼を請けた要介護3の脳血管障害を呈した利用者でした。重度の左片麻痺により左上肢下肢の筋はガチガチで曲げ伸ばしも難しい状態でした。寝返りや起き上がりにも介助を要し、一日の多くの時間をベッド上で過ごします。移動は車いすで何とか自走できましたが、ベッドから車いすへの移乗には介助が必要でした。

「歩けるようになりたい」という希望から、廊下には2mの長さの手すりが設置されていました。歩くことを生きがいにしていたことや歩く練習により足裏に刺激が入り覚醒レベルが上がる(目が覚める)ことを期待して手すりを設置した経緯はわかりました。

しかし実際は、身体機能の回復が期待できる時期を過ぎた利用者に対して歩行用の手すりの設置は、歩行への未練が残るだけで障がいの受け入れを妨げる要因にしかなりませんでした。

車いす移動も歩行移動もどちらも移動手段の一つでしかありません。障がいを受け入れて今ある力を利用した最適な移動手段を選択し、移動した先にある目標を達成することにこだわることが大切です。例えば、「近くのコンビニまで歩いて移動する」ではなく、「近くのコンビニでおにぎりを買うために移動する」といった目標設定が生活の質(QOL※)の向上につながります。とにかく誰もが歩くことが当たり前という考え方では、ノーマライゼーションの概念に逆行した根性論で終わってしまいます。

東京オリンピックや大阪万博の開催に向けて今こそ国をあげてノーマライゼーションの概念を浸透すべきです。施設や環境の整備だけではなく、障がいをそのまま受け入れられる社会を目指した考え方の整備が早急に求められています。

※QOL=Quality of life(クオリティ オブ ライフ)

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