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コラム-介護の専門家からみた福祉用具・住宅改修コラム-介護の専門家からみた福祉用具・住宅改修

コラム介護の専門家からみた

福祉用具・住宅改修

「理学療法士からみた福祉用具」、「作業療法士からみた住宅改修」を交代でそれぞれの視点から、専門的な知見を踏まえお伝えするコラムです。

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からみた

高齢者は腕が長い

デイサービスの利用者には、T字杖を使って生活全般が自立している方がたくさんいます。しかし、そのほとんどが適切な高さで杖を使っていません。なぜでしょうか?

杖の高さを調整するとき、まず大腿骨大転子(股関節の股下)の高さにグリップを合わせます。次に、自然に立った姿勢でつま先から前方へ15cm、外側へ15cmのところに杖をつき、グリップを握った腕の肘が30度曲がるように杖の高さを調整します。この2つのチェックポイントを確認して初めて適切な高さと言えます。しかしこれでは高齢者に最適な杖の高さにはなりません。なぜなら、高齢者は加齢とともに腕が伸びるからです。

もちろん実際に高齢者の腕が伸びることはありません。加齢とともに背中が丸くなり手の位置が地面に近づくため、大腿骨大転子の高さに合わせた杖は高く感じるわけです。高齢者は腕が長いと捉えて、もう一つの指標である橈骨茎状突起(腕時計が引っかかる骨の出っ張り)に合わせると丁度よい高さになります。腕時計の位置と股下の位置を比べてみて、どちらか低い方に合わせるとよいでしょう。

杖の高さが適切にならないもう一つの理由は、ほとんどの方が杖は高いほうが安心でやや高めに設定するからです。ある日、デイサービスの利用者に最近肩が痛くて困っていると相談を受けました。痛みがあって病院に行っても、原因がわからないと言うのです。身体を動かしてもらっても身体機能に問題はみられません。何が原因かわからないまま歩く姿を眺めていると杖のつき方に違和感を感じました。杖が3cm程高く調整されていたのです。杖の高さを下げて改めて歩いてもらうと、今度は杖がちょっと低いと訴えられます。それでも1週間我慢して使って、まだ低いと感じたら再調整することを約束して帰ってもらいました。翌週、杖の高さを確認すると、本人は何のことかも忘れるほど気にならなかったと言うのです。さらに1週間後には肩の痛みも忘れていました。ほんのちょっと杖が高かったことで、床からの衝撃を肩で受けてしまい痛みになっていたわけです。

T字杖は簡単に利用できる福祉用具です。しかし、調整まで簡単にしてしまうとトラブルの原因にもなりやすい福祉用具の一つです。その人にあった高さで使ってもらえるように、丁寧な調整を心がけてください。今年度は移動支援用具をテーマに、経験談を書き綴ります。提供のポイントがみなさんの参考になることを期待しています。

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